2005年 04月 22日 (金)
through the surface
「throughthesurface:表現を通して-現代的スタイルの日英交流」は日本と英国のテキスタイルアーティスト交流プロジェクトに関する展覧会です。 京都国立近代美術館の1階部分と4階展示室で展示されていました。
展覧会の企画に関する講演会が行われていたので聞いてきました。
講演会は、「through the surface-企画者の視点から」と題してこの展覧会のキュレーターでテキスタイルアーティストでもあるレスリー・ミラーというひとが話してくれました。
テキスタイルという文脈
彼女は、英国のテキスタイルアーティストを日本に、日本のテキスタイルアーティストを英国に紹介するというプロジェクトを通して、テキスタイル製作における異文化間の交流を図ってきました。 アーティストは決まった技術的限界や目標を提示するのではなく文脈を提示するのです。
異文化間の交流という文脈において、テキスタイルというのは文化間を絶え間なく流れる水脈のようなものです。 どの文化でもテキスタイルには社会的、政治的、実用的な意味があるからです。 そうした意味が、意識的、無意識的な記憶として人々の間を横断します。 同じ一枚の布が、実用的な服にも、アクセサリにも、僧職者階級の記号にもなるのです。
文化間のテキスタイルの多様性と関連性は「選択」においてもっともよく顕れます。 こうした選択の可能性が製作の要因にもなっていて、芸術的、文化的位置を選び取ったり位置を変えたりするための場を提供するのが「Throu the surface」の目的ということです。
Throu the surface - 表現を通して
作家は表面を形作り、見る人が向き合うのも表面です。 初めて誰かに合ったとき、あるいはどこかにいったとき、最初に目にするのも表面です。 しかし、別の文化を理解するには表面、うわべを突き抜けて、文化的下部構造に向き合わねばなりません。 そこに表現のイメージと様式が顕れているからです。
グローバル化の進んだ現在、他の文化を無視することは不可能ですが、それでも個人的、文化的境界線が、その表面を貫いて入ってくるものを防御しようとすることがあります。 しかし、文脈によってはその壁で区切られた空間同士が相互作用を及ぼし合うということが起こり得ます。
プロジェクト
このプロジェクトは文化的背景の異なる作家同士で影響を及ぼしあう有機的反応を探求しようという試みです。 作家の中の変化や及ぼされた影響は直接表面に現れるとは限りません。 したがって、このプロジェクトで重要な位置を占めることになるのが、Webサイトで掲載される、作家の記した日記です。
共同制作の核心は参加者の誠実な熱意です。 参加した作家はみな驚くべき寛大さをもって自らの製作に至る思索や方法論を日記上で公開しています。
三人の日本人若手作家が英国へ行き、四人の若手英国人作家が日本へ来て、8週間から12週間の間、それぞれのペアがそれぞれの方法で共同作業を行いました。
一方の国のベテラン作家と、他方の国の新進気鋭の作家のペアで共同作業をしますが、その関係はプロとして対等な立場で助言を与え合うもので、教えることとは違います。
吉田晃良&クレア・バーバーのペア
助言者の吉田晃良は美、儀式性を追求しており、友禅染を施し金箔をかぶせた四角い布を用いたインスタレーションを製作しています。 作品が腐食していくという物語性と儀式性があり、金箔には闇から光を引き出すという意味があります。
被助言者のクレア・バーバーは時間についてのインスタレーションを作成してきました。 捨てられたもの、いらなくなったものの持つ意味、美を付加するのです。
伏見稲荷大社で彼女は、人のあまり通らない石段に生えた鮮やかな緑色のコケの上に千本以上のドレスピンを刺し、翌日抜き取るというインスタレーションを行いました。 ドレスピンにはピンクッションに刺して鳥居と同じ朱色のスプレーを吹き付けてありました。 ピンの上部だけが朱色に着色されたため、緑色のコケの上に朱色の霧がかかったようになっています。
そして、このピンは再利用されました。 伏見稲荷大社のコケを彩ったドレスピンは、今度は英国から持ってきた廃棄物の表面を丹念になぞっています。 これは、聖なるものと深遠なる物、日本と英国の物質文化を結びつけ、美と価値に対する先入観に疑問を投げかけます。 この作品は会場に展示されています。
感想
抜けている点も多いと思いますが、大体こんな感じの話だったと思います。 テキスタイルアートというのは単なる平面作品と違って、表面だけでなく表面を構成する布自体にかかわる芸術なので、表面の向こう側にある表現によって顕れるものに注目するというのは理にかなっています。
触れるのを忘れていましたが、クレア・バーバーが立ち入ることを禁じられた産業廃棄物の内側に強い関心を持って対峙したとき、その内側を物語る表面について述べていました。 壁で仕切られた向こう側を踏まえたうえでの表面というのが興味深いです。
また、吉田晃良は金箔という素材により、クレアは廃材や使われなくなったものにより、共に時間というものを作品に取り込もうとしています。 それで、芸術というのは見えないものにかかわることかもしれないと思いました。
- Throu the surface 公式ページ(英語)
- プロジェクトにかかわる情報から、参加アーティストの日記まで見ることができます。英語ですが…。
